web情報誌Profession Journal最新号が昨日公開されて,月に1度の連載を続けている「会計不正調査布告書を読む」連載第157回が掲載されています。今回とりあげた調査報告書は,札幌市に本社を置く株式会社エコノスが設置した特別調査委員会によるものです。エコノス社は,北海道で,「ブックオフ」や「ハードオフ」といった買取店舗をフランチャイズ契約で展開している企業です。その「ハードオフ」店舗の店長さんが,架空の商品買取を行って買取代金を不正に領得したり,店内にある買取消費を持ち出して転売したりして,3,000万円以上を私的に費消していたという事件です。
報告書では,店頭のタブレット端末を使って商品の架空買取を行っているシーンがわかりやすく再現されています。また,月次の棚卸で商品が実在しないことを隠蔽するために店長が行った工作が,推測されています。「推測」と評したのは,横領を行った店長さんは,調査の途中に店舗から姿を消して,その後,失踪を続けているからです。
報告書を読んで感じたのは,エコノス社が運営するハードオフ店舗などでは,店長さんや店員さんが「不正など絶対しない」という性善説を前提に,買取端末が設計され,マニュアルが作られ,運用が続いていたということでした。価格の低い商品の買取(たとえばブックオフ店舗)であれば,不正を働く苦労と発覚後の処分を考えれば,「割に合わない」と判断するかと思いますが,1点当たり数万円もしくはそれ以上ということもありそうな商品が流通する中古市場では,「ばれないならやってしまおう」というインセンティブが働くのかもしれません。
今回,エコノス社の報告書をとりあげた理由のひとつは,エコノス社が報告書を公表したのと同日に,ブックオフグループホールディングス株式会社が,子会社が運営する複数店舗において,従業員による架空買い取り,在庫の不適切な計上及びこれらによる現金の不正取得の可能性があることが発覚したというリリースを出したことです。
もしかしたら,エコノス社が公表した不正を契機に,同社でも社内調査を行っていたのかもしれないと思い,調査結果の公表を待ちたいと考えます。