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Channel: 米澤勝税理士事務所blog
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中原翔『組織不正はいつも正しい――ソーシャル・アバランチを防ぐには』

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 たまには書評を書こうかなと思いまして,中原翔さんの『組織不正はいつも正しい』を読んで考えたことなどを,書きます。とても面白く拝読でき,わかりやすい解説だったと思います。

 個人的には,日ごろから会計不正に興味を持っているので,中原さんが「東芝事件」をどのように評価しているのかが,一番の興味でした。そういう意味では目新しい分析はなかったものの,「時間軸」の違いが部下による不正を誘引したという指摘は,なかなか面白い視点ではないかと思いました。今期中(数日以内)に黒字化を求める経営トップ,来期以降の黒字化を提言するも,却下された事業部のトップ。経営トップの意向にこたえるためには,不正しかないと,事業部長に忖度をを行う現場の社員たち。さて,誰が悪いのか。誰のために,会計不正を行っているのか。

 筆者がサラリーマンだったころ,東芝経理部の幹部社員の方とお話しする機会が何度かありました。筆者がいた組織は,良くも悪くも,論理よりも過去の経験,理屈よりも体力,先輩社員がやってきた原価計算は絶対で,異を唱えることはできない「空気」に包まれていましたが,当時の東芝経理部幹部社員は,最新の原価計算を語り,New Yorkで上場を維持することが,経理部員のモチベーションに繋がっているのだと,教えてくれました。

 東芝の不正会計事件からもうすぐ10年。相変わらず,証券等監視委員会から課徴金納付命令勧告が出される事案のほとんどが,不正会計で,さらにその多くが架空売上であるという実態について,『組織不正はいつも正しい』と言い切ってしまっていいのかと,ほんの少し疑問を呈して,書評に代えたいと思います。

 公認会計士のみなさんや内部監査部門のみなさんには,ぜひ,ご一読をお奨めします。


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